【令和5年度】東京都立入試 社会振り返り(大問3)


 今回は大問3の振り返りを行います。前回記事はこちら。問題は東京都が公開しており、ダウンロードをすることができます(こちらからどうぞ)。


【大問3】全体の難易度〈☆☆〉

・全体の所感
➝難易度は例年並み。ただし、油断しているとミスリードにひっかかる程度には歯ごたえがある。条件記述は資料から要点をつかめれば十分に書ける内容だが、問われていることを整理できるかが鍵。


問1 都道府県の特定(予想正答率40%)
➝前回も伝えましたが、読み取りの鉄則は判断しやすいものから処理していくこと、そして作業をしながら解くことです。これを怠ると今回は致命的なミスをしてしまう恐れがあります。


 今回題材となった都道府県は岩手県、茨城県、長野県、宮崎県です。


 判断しやすいのはアとエですね。まずアですが、「平均標高は1132m」「フォッサマグナなどの影響」という表現から中部地方の中央高地であることが容易に判断できます。ちなみにフォッサマグナは糸魚川(新潟県)と静岡を結ぶ構造線のことで、途中で長野県も通ります。ということでアは長野県で確定。ちなみに、その後の「東部の高原で他県と比べ時期を遅らせて栽培されるレタス」という表現は促成栽培と高原野菜の説明ですね。


 続いてエに関しては「夏季に吹く北東の風の影響で冷涼となる」という表現を見れば、これが「やませ」の説明だとすぐ分かるでしょう。ということでエは岩手県。ちなみに「水深が深い湖」とは十和田湖のことですね。一応、略地図上にも載っています。まさかこれを霞ヶ浦と勘違いする人は少ないと思いますが一応。余談ですが、日本最深の湖は田沢湖(秋田県)です。


 ここまで着実に特定ができればあと一息です。まずは分かりやすいところからが原則でした。ということはここからが厄介なんですよ。


 イとウの判断ですが、前半部分で判断すると痛い目に遭います。「施設栽培」「年間を通して」「ピーマン」という表現に注目すると「宮崎平野の促成栽培だ!!」と勘違いしてしまいます。特にピーマンは促成栽培の定番の野菜ですしね。ただ最後まで読むと違和感たっぷりの表現があります。


「東京まで3時間かけてトラックで輸送されている」


 宮崎県から東京まで3時間でいけるわけがないでしょう。それも飛行機ならまだしもトラックで。時速500キロで爆走しても無理ですよ。ということでイは東京から近い場所であるということが分かりました。よってイは茨城県です。ウが宮崎県の説明ですが、「東京まで1日以上かけてフェリーなどで輸送されている」とあり、位置関係的にも正しいと判断できます。ちなみに宮崎県はきゅうりの生産量が日本一です。


 おそらくですが、作業を怠ってひっかかる受験生が多かったのではないかと思います。東京の読み取り問題は知識は必要なのはもちろんですが、それだけだとひっかかってしまいます。


 まず、複数の根拠をできるだけ見つけること。そして、知識を活用して事実の整合性を確かめることが重要になります。いやー、良い問題だった!




・問2 空港の特定(予想正答率70%)
➝成田国際空港、東京国際空港、関西国際空港、那覇空港の中から略地図Xの空港(東京国際空港)を特定する問題です。問1が説明文のみで判断させる問題でしたが、こちらは「国内貨物取扱量」「輸出入額」「輸出入品目」と複数のデータがあり、目移りしそうです。


 ただ、この問題は問1ほどいじわるではないですし、読み取りの原則に従っていけば難しくありません。なんせ東京国際空港さえ分かればいいのですから。





 まず判断しやすいのが成田国際空港と那覇空港。ポイントは輸出入額。成田国際空港の貿易額は日本一ということを知っていれば、額が最も大きいウが成田国際空港と判断できます。一方、那覇空港は国際空港ではありませんので、額が一番小さいイが那覇空港となります。


 残ったアとエですが、エは国内貨物取扱量が最も多いことが特徴ですね。「国内」というところがポイント。ご存じ、東京国際空港の別称は「羽田空港」。羽田空港は国際線より国内線が中心の空港でしたね。ということはエが東京国際空港となります。


 数値の大小に注目することが問題が解きやすくなります。まさにこの問題はその典型でした。


・問3 モーダルシフトを推進する目的とその前提(予想正答率30%)
➝東京定番の読み取り型の記述。字数制限もないため、一見書きづらいですが、まずは問われていることを整理する必要があります。今回、書くべきことは二つです。


① 国がモーダルシフトを推進する目的
② 国がモーダルシフトを推進する上で前提となる、七地方区分に着目した貨物鉄道の路線の敷設状況及び貨物ターミナル駅の設置状況


 まずは①から見てみましょう。モーダルシフトとはⅠの資料を見る限り、工場と納品先の輸送の一部に貨物鉄道を利用することとまとめることができます。


 そしてⅡの資料を見ると貨物自動車に比べて貨物鉄道は二酸化炭素を排出しないことが読み取れます。

 ということは「二酸化炭素の排出を抑制する」のような目的が見えてきますね。


 さて厄介なのはもう一つの記述。長ったらしいのですが、要は「七地方区分に着目した貨物鉄道の路線の敷設状況及び貨物ターミナル駅の設置状況」を説明すればいいわけです。


 Ⅲの資料を見ると、ご丁寧に七地方区分に分けられた略地図となっています。それをもとにすると、「路線も貨物ターミナル駅も七地方すべてに敷設、設置されている」ことが分かります。


 条件記述で得点するための第一歩はまず問われていることを整理すること。これに尽きます。その前提があっての資料の読み取りなのですから。


 大問4の解説はこちら。ぜひお読みください。