受験生の皆さん、入試お疲れさまでした。合格発表に先立ち、今年度の社会の問題の講評を書きたいと思います。
【難易度】
・やや易化
・平均点は58点前後と予想
【総評】
全体的にひねりがすくないシンプルな問題構成だったと感じます。というのも昨年度のようなひっかけがある読み取りが出なかったこと、条件記述も比較的オーソドックだったり、資料を駆使すれば書けるものだったりしたためです。昨年度、難化した歴史の並び替えもだいぶ解きやすくなりました。
もちろん、問1と問2で「すべて」選ぶ問題が出るなど一筋縄ではいかないものの、昨年に比べればだいぶ配慮のきいた問題構成だったと思います。理不尽さがないので作成者が変わったのかなと思ったくらいです。
それでは設問別にみていきましょう。
【問1】総合問題
(2)では「すべて」選ぶ形式の読み取り問題が出ましたが、複雑な資料ではなく読み取るべき内容も難しくありません。「すべて」という指示を見落とさなければ十分正解できます。ですが、引っかかる生徒が大分いる気がしますので、正答率は40%というところでしょうか。
(3)の並び替えはマルタ会談(1989年)と湾岸戦争(1991年)の判断が少し難しかったでしょうか。定番の公民分野の記述は字数指定が8字の「環境アセスメント」。意外とかけていなさそうですね。これも正答率は40%くらいですかね。
【問2】日本地理
一番やりづらかったのは(1)でしょうか。政令指定都市が人口50万人以上か100万人以上か判断する必要がありました。地形図では地形図から読み取れることを「すべて」選ぶ問題が出ました。「すべて」選ぶ形式の問題はこれから先の定番になるのでしょうか。そして地形図で久しぶりに面積計算が出ましたね。2018年度前期に出た佐鳴湖の面積を求めるような意地悪さがないシンプルな問題だったので十分正解できたでしょう。正答率は60%ほどでしょうか。
【問3】世界地理
今年度は久しぶりに正距方位図法が題材になりました。ただ、そのままの出題ではなく、メルカトル図法と正距方位図法を見比べて判断する2017年度前期の問題形式のリメイクのようです。とはいえ、難しい読み取りを要求されていないので正解したいところ。正答率は60%といったところでしょう。
そして世界地理としては3年ぶりに雨温図が出ましたね。「あ」はポルトガルのリスボンかな、夏は乾燥し、冬はまとまった降水がある地中海性気候の特色が理解できれば解きやすかったでしょう。
ちなみに(1)は地図の問題でしたが、(2)~(5)まで実はヨーロッパ州が題材!それも(4)のヨーロッパの言語分布は僕の見立て通りの出題ですね!詳しくはこちら。
さて話を戻しますが、(3)の「冷帯地域の建物が高床式である理由」条件記述は定期テストでもよく出題されるある意味定番の問題ですね。その意味で既視感があった受験生もいたでしょう。50%くらいの生徒は正しく書けたのではないでしょうか。
【問4】歴史(前近代)
ほかの大問に比べると易しめな構成ですね。(1)は分国法と公事方御定書を間違えてほしくないですし、(5)の防人は国語の授業でも学習しているでしょうからどちらも正答率は高いでしょう。70%くらいですかね。
少し意地悪だったのは紫式部の作品を選ぶ(2)ですかね。しっかり誤答の選択肢に「枕草子」が用意されています。ベタですが、地味に効果的。正答率は60%くらいに落ち着きそう。
もはや定番になっている世界のできごとと日本のできごとを結びつける問題は19世紀に世界でおこったできごとを選ぶ問題でした。年号暗記は必須になってきていますね。
条件記述は歴史分野としては珍しく資料の読み取り形式でした。資料を読み取れば「分割相続が進んだことで生活が苦しくなった」ということが読み取れるでしょう。半分は正しく書けたんじゃないかな。
【問5】歴史(近現代)
1年違いの並び替えもなければ理不尽な条件記述もない…大分解きやすい構成ですね。ただ、(1)の第一次世界大戦のときににほんでおこったできごとや(5)の三重県でおこった公害病を選ぶ問題などは単に語句だけでなく語句の説明までできる必要がある問題ですので注意が必要ですね。単純な暗記だけでは通用しない程度の問題には仕上がっています。
(4)の並び替えは4つのうち第二次世界大戦後に当てはまる3つのできごとを並び替える問題でしたが、ブービートラップが国際連盟っていうのがベタですね。さすがに引っかからないと信じたい。正答率は60%ほどとなるでしょう。
【問6】公民(経済分野)
予想通り、需要供給曲線が出ましたね!(詳しくはこちら)一見シンプルに見えて需要量と供給量の関係を理解したうえで価格の推移も考える必要があるため、やや難しめの仕様ですね。
条件記述はここ数年、問7からの出題が中心でしたが、問6から出題されました。内容は好景気時の財政政策についてのものでした。「社会資本整備のための」に続く形で書く必要があるため、増税だけでなく、公共事業(公共投資)を減らすという内容を入れなければならないあたり、ちょっと意地悪ですね。正答率は30%ほどでしょうか。
(3)は初見に近い読み取り問題、東京都に近い形式ですね。年表の内容をもとに時期ごとの経済成長率の推移のグラフを選ぶ問題でしたが、受験生は見慣れない形式であるため面食らったかもしれません。とはいえ、落ち着いて対応すれば十分に正解できます。正答率は50%ほどでしょう。
総じて難しめの構成でした。経済分野を苦手とする人も多いでしょうから、来年度の受験生はしっかり準備したほうが良いですね。
【問7】公民(政治分野)
3問すべて裁判所からの出題。人権分野の内容にほとんど触れないとは。(1)は刑事裁判の仕組みの穴埋めという割かし定番の形式。厄介なのは(2)の「被疑者」の語句記述ですね。漢字指定だけでなく配点が4点と取れなかった場合のダメージがまあまあ大きい。それも「容疑者」という別解を用意しない意地悪さもありますから正答率は40%ほどになるかもしれませんね。
(3)は久しぶりの正誤判断の問題ですね。ですが、難易度は比較的易しめですね。誤答の表現が「すべて」とか「~ことはない」という決めつけをしている分、判断はしやすかったでしょう。
【問8】公民(国際社会)
(1)は国の領域に関する正誤問題。「領海」「公海」「排他的経済水域」の違いが理解できていれば難しくなかったでしょう。(2)はODAに関する読み取り問題。問8で読み取りを出してくるのは意外ですね。この傾向が今後も続くか注目したいですね。