【令和5年度】東京都立入試 社会振り返り(大問6)



 今回は大問5の振り返りを行います。前回記事はこちら。問題は東京都が公開しており、ダウンロードをすることができます(こちらからどうぞ)。




【大問5】全体の難易度〈☆☆〉

・全体の所感
➝読み取る力だけでなく、ある程度細かい知識も要求されているので、全体的に歯ごたえがある問題が多いですね。最後まで油断ならない問題構成といえます。


・問1 鉄道路線の特定(予想正答率40%)
➝まさかの鉄道路線の特定。意表を食らった受験生も多いと思いますが、落ち着いて特定できるキーワードを見つけていきましょう。


 まず、アは「植民地」「州を越えての鉄道の乗り入れ」「東西の州都を結び鉄道」というキーワードに注目しましょう。植民地だけでは絞れませんが、「州」という言葉に注目できるかどうかですね。「州」という言葉で思いつくのはアメリカですね。おそらくアの鉄道が走っている国は国土面積が大きいと考えられます。現状ではこれくらい。判断に迷ったら一度置いておきましょう。分かりやすいものから判断するが鉄則でしたね。


 続いてイですが、こちらは分かりやすい。「綿花の輸出」だけでも判断できそうですが、「外国の支配に不満をもつ人々が起こした大反乱」にも注目したいところ。「鎮圧された9年後の1867年に」という表現も踏まえると時期的にもインド大反乱のことだと判断できます。よってイはインド北東部を走るCだと判断できます。


 そしてウですが、この知識はちょっと細かいが知っておきたい知識。ポイントは「国際運河」です。中学社会において国際運河として覚えておきたいのは、地中海と紅海を結ぶエジプトの「スエズ運河」太平洋と大西洋を結ぶ中南米にある「パナマ運河」です。鉄道の位置も踏まえると今回は「パナマ運河」の説明ですね。よって、ウは北米と南米をつないでいるAの鉄道と判断できます。ちなみに「国際運河」の役割が理解できていれば、パナマ運河を知らずとも「二つの大洋をつなぎ」という表現から判断できるようにもなっています。


 最後にエですが、ポイントは「銅を輸送する鉄道」「内戦により使用できなくなり」「大陸横断鉄道」あたり。文字通り「大陸横断」しているのはBとDのみ。そうすると、残りの語句で判断すべきですね。Bはオーストラリア大陸を横断する鉄道ですが、オーストラリアで銅が採掘されるという内容を学習したことはあるでしょうか??ありませんね(本当は採掘しているのですが中学レベルであれば覚えなくてOK)。オーストラリアで採掘される主な鉱産資源は石炭、鉄鉱石、金、ボーキサイトなどです。また、「内戦」という表現にも違和感を覚えますね。内戦が頻発しているのは民族紛争が多発しているDのアフリカ大陸側です。よって、消去法的にオーストラリアのことではないため、エはDの鉄道、残ったBの鉄道の説明文がアということになります。


 ちなみにかなり細かい内容ですが、Dの鉄道の題材はザンビアですね。ザンビアは輸出品目の大半を銅に依存するモノカルチャー経済に陥っています。教科書にもグラフが載っています。銅といってもチリばかりではないのです。



・問2 文章中で述べている国際博覧会に当てはまるものとその開催国(予想正答率50%)
➝うーん、問1は知識がある程度不足していてもなんとかなったが、こっちはピンポイントで知識がないと厳しいから案外こっちの方がやりづらいって生徒はいそう。ポイントは「リオデジャネイロでの地球サミットから8年後に開催」「国際河川の東側に位置する森林(シュヴァルツヴァルト)」「偏西風などにより運ばれた有害物質による酸性雨が原因」あたり。


 まず、年表をもとにどの国際博覧会か判断していきましょう。「リオデジャネイロでの地球サミットから8年後に開催」とあるので、地球サミットが1992年に開催されていることを知っていれば2000年の万国博覧会を選べばいいイージーな問題になります。仮に正確な年号が分からずともだいたい1990年あたりだなあって分かれば、判断できるのでここは難しくない。


 問題はどこの国で開催されたかの判断。これが難しい。選択肢はスペイン、ベルギー、ドイツ、カナダ。まずは「偏西風などにより運ばれた有害物質による酸性雨が原因」に注目しましょう。酸性雨の問題がヨーロッパ州で問題になっていることは教科書で学習しましたね。さらに偏西風の影響でヨーロッパでも東側で被害が出ていることも。この段階で地理的にスペインとカナダ(さすがに遠すぎる)が選択肢から排除できます。


 問題はベルギーとドイツの判別。地理的にはどっちもありうる。そこで「国際河川の東側に位置する森林(シュヴァルツヴァルト)」に注目します。国際河川とはライン川のことでしょう。「国際河川の東側」とあるのでライン川が主にドイツを流れていることを考えれば、ドイツよりも西にあるベルギーは選べませんね。



 以上のことからこの国際博覧会はドイツで行われたと判断できます。余談ですが、シュヴァルツヴァルトって響きからドイツ語だなって判断もできなくはないですが、中学生にこういう言語的な感覚は難しいんじゃないかなって思います。




・問3 文章が述べている年の人口ピラミッド(予想正答率50%)
➝大問6はどの問題もサクッと解ける問題じゃないですね。最後の問題も知識を活用しつつ読み取りを行う必要があります。まずは問題文からヒントをいただきましょう。4つの人口ピラミッドはそれぞれ1950年、1970年、2000年、2020年のものです。


 次に説明文からキーワードを探しましょう。「地方から都市への人口移動」「郊外にニュータウンが建設され」というところからおおよその年代が判断できます。地方から都市への人口移動がおこったのは高度経済成長によって都市部で産業が発達し、労働力が求められたためですね。都市部の過密が問題になったことでニュータウンが建設されたのは1960年代~1970年代でした。


 また、「大阪では『人類の進歩と調和』をテーマに万国博覧会が開催」という表現から時期が完全に特定できますね。大阪で万国博覧会が開かれたのは1970年ですね。2025年に再度大阪で万国博覧会が開かれるので時事的に使ったのでしょうか。千葉県入試でも題材にされていましたね(詳細はこちら)。


 あとはどの人口ピラミッドか判断するだけですね。ここで「65歳以上の割合は7%を超え、高齢化社会の段階に入っている」に注目して慌てて判断してはいけません。人口ピラミッドは富士山型(多産多死)→つりがね型→つぼ型(少子高齢化)の順に変化するのでした。


 戦後間もない1950年の人口ピラミッドは間違いなく富士山型でしょう。ということは年少人口(15歳以下の人口)が最も多いイが1950年のものであると判断できます。逆に年少人口が最も少ないエは少子高齢化がかなり進行した2020年のものだと分かりますね。


 あとは簡単です。先ほどの人口ピラミッドの原則からアとウのうち年少人口がより多い方が1970年のものだと判断できます。よってアが1970年の人口ピラミッドとなります。


 東京はこういった知識を活用させて読み取らせる問題がほんと好きですね。日ごろからこういった読み取り問題を解くときには作業を徹底すること、そして解き終わった後はどの部分の説明箇所に注目すべきか、どの知識が解くために必要か振り返る機会が必要だと言えますね。


 都立入試の総括はこちら。ぜひお読みください。